「冬だから大丈夫」――その言葉ほど、キッチンを無防備にしてしまう魔法はないかもしれません。
一晩寝かせたカレー。朝、手早く作ったお弁当。
家族のために、ちゃんと火を通して、清潔に作った“いつものごはん”。
それなのに、昼過ぎから始まる腹痛。止まらない下痢。吐き気。
「どうして…?」と首をかしげながら、心のどこかで思ってしまうのです。
“冬なのに、まさか食中毒?”
看護師として働いていた頃、私は何度も見てきました。
「ちゃんと加熱したのに」「冷めてからしまったのに」――そんな後悔の声を。
実は冬は、菌がいない季節ではありません。
暖房の効いた室内、バッグの中のほんのり温かい温度、保温弁当箱の“中途半端な保温”。
それらが重なると、菌にとっては居心地のいい“増える時間”が生まれてしまいます。
この記事では、冬に多いカレーとお弁当を中心に、
「なぜ冬でも食中毒が起きるのか」そして「今日から家庭で防げるコツ」を、やさしく噛み砕いてお伝えします。
あなたの“いつもの食卓”を、安心のまま守るために。
まずは、冬の落とし穴から一緒に見つけていきましょう。
🟠 冬の食中毒は「油断した家庭」で起きている

「食中毒って、夏の話でしょ?」
もし今、そう思ったなら――
実はいちばん注意が必要なのが“今”かもしれません。
厚生労働省の統計を見ても、食中毒は一年中発生しています。
そして冬に多いのが、レストランではなく“家庭内”で起きるケース。
なぜなら冬は、
「大丈夫だろう」という油断が、知らないうちに積み重なりやすい季節だからです。
❄️ 冬でも食中毒が起きる理由
冬は外の気温が低いため、
「菌は増えにくい」というイメージがありますよね。
でも、ここで見落とされがちなのが“家の中の環境”です。
- 🏠 暖房の効いたリビング
- 🍱 バッグの中のお弁当
- 🍲 余熱が残ったままの鍋
これらはすべて、菌が増えやすい20〜40℃前後になりやすい場所。
つまり冬でも、菌にとっては「快適な環境」が普通に存在しているのです。
💡 ポイント
季節は関係ありません。
「温度」と「時間」がそろえば、菌は静かに増えていきます。
😌「夏じゃないから大丈夫」という思い込み
看護師として働く中、
冬に腹痛や下痢で受診される方から、よくこんな言葉を聞きました。
「まさか食中毒だとは思わなくて…」
「冬だし、常温でも大丈夫だと思ったんです」
この「思い込み」こそが、冬の食中毒の一番の原因です。
✔ 手洗いがなんとなく雑になる
✔ 「少しくらい置いても平気」と思ってしまう
✔ 再加熱すれば安心だと信じてしまう
どれも悪気はありません。
でもその“少しの油断”が、体調不良につながってしまうのです。
🏠 家庭内で多い発生シーン
冬の食中毒は、特別なことがなくても起こります。
むしろ、こんな「よくある日常」の中に潜んでいます。
- 🍛 前日のカレーやシチューを鍋のまま保存
- 🍱 朝作ったお弁当を昼まで持ち歩く
- 🧽 乾いているように見える布巾・スポンジの使い回し
どれも「ちゃんとやっているつもり」だからこそ、
危険に気づきにくいのです。
冬の食中毒は、
ズボラだから起きるわけでも、
不衛生だから起きるわけでもありません。
「知らなかった」
ただ、それだけで起きてしまう。
🌱 だからこそ大切なのは
「怖がること」ではなく、
知って、少し行動を変えることです。
🍛 冬のカレーが危ない理由

寒い日に食べるカレーは、どうしてあんなに安心するのでしょう。
体が温まり、家族も笑顔になる――
冬の食卓の“定番ヒーロー”ですよね。
だからこそ、私はこの章をとても大切に書いています。
「いちばん安心している料理」ほど、落とし穴が深いからです。
😌 カレーは食中毒の温床になりやすい
実はカレーは、菌の立場から見ると理想的な環境です。
- 🥔 野菜・肉がたっぷり(栄養豊富)
- 💧 水分が多く、乾燥しにくい
- 🍲 大鍋で作ることが多い
さらに冬は、
「すぐ冷めないから」と鍋ごとコンロに置いたままにしがち。
この“ゆっくり冷える時間”が、
菌にとっては静かに、確実に増えるゴールデンタイムになります。
⚠️ 注意
見た目・匂い・味に変化がなくても、
菌は増えていることがあります。
🔥 再加熱しても安心できない理由
「でも、食べる前にグツグツ温め直してるし…」
そう思った方も多いはずです。
ここで知っておいてほしいのが、
“加熱しても生き残る菌がいる”という事実。
カレーで特に問題になるのが、
加熱に強い“芽胞(がほう)”を作る菌です。
この芽胞は、
✔ グツグツ煮ても死なない
✔ 冷めてくると再び活動を始める
つまり――
「一度しっかり火を通した=安全」ではないのです。
🦠 ウェルシュ菌が増えやすい条件
冬のカレーで最も注意したいのがウェルシュ菌。
この菌は、こんな条件がそろうと一気に増えます。
- 🍲 大量調理(大鍋)
- ❄️ 常温での放置・自然冷却
- ⏰ 食べるまでに数時間〜一晩
そして怖いのが、
食べてから6〜18時間後に症状が出ること。
夜に食べたカレーが原因で、
翌朝や翌昼に腹痛・下痢が起きると、
カレーが原因だと気づかれないことも少なくありません。
💡 ここが重要
「冬」「家庭」「いつものカレー」
この3つが重なると、リスクは一気に見えにくくなります。
カレーは悪者ではありません。
扱い方を少し変えるだけで、
安心して楽しめる料理に戻ります。
次の章では、
同じように油断しやすい「冬のお弁当」に目を向けていきましょう。
🍱 冬のお弁当で起こる食中毒の落とし穴

「冬のお弁当で食中毒なんて、聞いたことない」
そう感じる方も多いかもしれません。
でも実は、冬のお弁当は“気づかれにくいリスク”のかたまり。
しかもそれは、忙しい朝のほんの小さな判断から始まります。
⏰ 朝作って、昼までに何が起きているか
朝7時に完成したお弁当。
昼12時まで――約5時間。
この間、お弁当はどこにありますか?
- 👜 暖房の効いた室内
- 🎒 通勤・通学バッグの中
- 🚗 車内やロッカー
実はこれらの場所、冬でも20〜30℃以上になることがあります。
この温度帯は、
多くの細菌がいちばん元気に増えるゾーン。
⚠️ ポイント
冬=低温、ではありません。
「お弁当が置かれる環境」が重要です。
🔥 常温・保温の誤解
「冬だから常温で平気」
「保温弁当箱だから安心」
この2つは、冬のお弁当でとても多い誤解です。
常温とは、
菌が増えない温度という意味ではありません。
また、保温弁当箱も使い方を間違えると、
菌にとって快適な“ぬるい環境”を作ってしまいます。
特に注意したいのは、
✔ 少し冷ましたおかずを詰める
✔ 余熱をせずにフタをする
この状態だと、
30〜50℃前後の危険な温度帯が長く続いてしまうのです。
🍳 おかずの選び方で変わるリスク
同じお弁当でも、
中身次第でリスクは大きく変わります。
冬のお弁当で注意したいおかずは、こんな特徴があります。
- 💧 水分が多い(煮物・和え物)
- 🥚 加熱が不十分になりやすい(半熟卵)
- ✋ 調理後に触れる回数が多いもの
「昨日の残り」「彩りに少しだけ」
そのちょい足しが、菌を運んでしまうことも。
🌱 覚えておいてほしいこと
冬のお弁当は、
“作る時間”より“食べるまでの時間”が重要です。
お弁当は、愛情そのもの。
だからこそ、少しの知識で守ってあげたいですね。
次の章では、
多くの人が信じている「保温弁当箱=安全」という神話について、
もう一歩深く見ていきましょう。
🔥 保温弁当箱は安全?実は危険?

寒い季節になると、ぐっと出番が増える保温弁当箱。
「温かいまま食べられるし、冬はこれが一番安全」
そう思っている方も多いのではないでしょうか。
でも実は――
保温弁当箱は“使い方次第で危険にもなる”、
とても繊細なアイテムなのです。
❌ 保温=菌が増えない、は間違い
まず大前提として知っておいてほしいのは、
「温かい」と「安全」はイコールではないということ。
菌が増えにくいのは、
✔ 75℃以上(しっかり加熱)
✔ 10℃以下(冷蔵レベル)
一方で、問題になるのが――
30〜50℃の“ぬるい温度帯”。
この温度は、
多くの細菌が最も活発に増えるゾーンです。
保温弁当箱の中身がこの温度帯に長くとどまると、
「守っているつもり」が、
実は菌を育てている状態になってしまいます。
🌡️ 中途半端な温度帯のリスク
こんな使い方、思い当たりませんか?
- 🍱 少し冷ましてから詰めた
- ⏳ 忙しくて、余熱を入れなかった
- 🧺 朝から昼まで長時間持ち歩いた
この場合、弁当箱の中は――
高温でも低温でもない、
いちばん危険な状態になりやすいのです。
⚠️ 注意
「ほんのり温かい」は、
安心のサインではありません。
特に子ども用のお弁当は、
量が少ない分、温度が下がるのも早いため要注意です。
🚫 保温弁当箱でやってはいけない使い方
看護師として、そして一家庭の親として、
これは避けてほしいと感じる使い方があります。
- ❌ 冷めたおかずをそのまま入れる
- ❌ 前日の作り置きを温め直して詰める
- ❌ 「保温だから大丈夫」と長時間放置する
保温弁当箱は、
「しっかり熱々のものを、短時間持ち運ぶ」
という条件がそろって、初めて安全に機能します。
🌱 覚えておいてほしいこと
保温弁当箱は「魔法の箱」ではありません。
使い方を知ってこそ、味方になる道具です。
次の章では、
こうしたリスクの背景にある「冬のキッチンそのもの」に目を向けていきます。
実はそこにも、見落とされがちな原因が潜んでいます。
🏠 冬のキッチンに潜む“見えない原因”

「ちゃんと加熱している」
「見た目も清潔にしている」
それでも冬の食中毒が起きてしまうのは、
原因が“目に見えない場所”に潜んでいるからです。
ここでは、看護師として現場を見てきた私が、
特に多いと感じた3つの盲点をお伝えします。
🔥 暖房の効いた室内
冬のキッチンは寒そう――
そう思われがちですが、実際はどうでしょう。
- 🏠 エアコンや床暖房
- 🍳 調理中のコンロの熱
- 👨👩👧 家族が集まる夕方
これらが重なると、キッチンの室温は20℃以上になることも珍しくありません。
菌にとっては、
「冬かどうか」は関係ない環境が、
毎日のように作られているのです。
⚠️ ポイント
冬の室内=低温、とは限りません。
暖房のある空間は、菌も一緒に温めてしまいます。
🧽 手洗い・布巾・スポンジの盲点
冬は水が冷たく、
手洗いが短くなりがちです。
さらに注意したいのが、
布巾やスポンジ。
- 「見た目はきれい」
- 「毎日使っているから大丈夫」
そう思っていても、
湿った布巾やスポンジは菌の温床になりやすい場所。
特に冬は乾きにくく、
菌が残りやすい季節でもあります。
その布巾で、
✔ 食器を拭く
✔ 調理台を拭く
✔ 手を拭く
――知らないうちに、菌を広げてしまうことも。
🍲 作り置き文化が招くリスク
忙しい毎日の中で、
作り置きはとても心強い味方ですよね。
でも冬は、こんな油断が起きやすくなります。
- 「寒いから、しばらく置いても平気」
- 「あとで冷蔵庫に入れよう」
- 「もう一回温めれば大丈夫」
この“少しだけ”の常温時間が、
菌にとっては十分な増殖チャンスになります。
特にカレーや煮物など、
鍋のまま保存しがちな料理は要注意。
🌱 大切なのは
作り置きをやめることではありません。
「冷ます・分ける・早く保存する」という一手間です。
冬のキッチンは、
清潔そうに見えるからこそ、油断しやすい場所。
次の章では、
これまでのリスクを踏まえた上で、
看護師として私が実践している「冬の家庭内予防ルール」を、
具体的にお伝えします。
🩺 看護師が実践している、冬の家庭内予防ルール

ここまで読んで、
「じゃあ、結局どうすればいいの?」
そう感じた方も多いと思います。
大丈夫です。
冬の食中毒は、正しい知識があれば防げます。
ここでは、
看護師として現場を見てきた私自身が、家庭で実際に守っているルールを、
できるだけシンプルにお伝えします。
🍛 カレー・煮込み料理の正しい保存
冬に一番トラブルが多いのが、
カレー・シチュー・煮物などの煮込み料理です。
私が必ず意識しているのは、次の3つ。
- 🧊 小分けして急冷する
- ❄️ 鍋のまま保存しない
- 🔥 再加熱は全体をしっかり
特に「鍋のままコンロに置く」は、
冬の食中毒あるある。
粗熱を取ったら、
浅い保存容器に分けて冷蔵・冷凍。
これだけで、リスクは大きく下がります。
💡 ワンポイント
「冷めてから」は待ちすぎない。
触れられる温度になったら保存が目安です。
🍱 お弁当作りで意識する3つのこと
お弁当は、
作る人の愛情が一番こもるごはん。
だからこそ、私は次の3つだけは必ず守っています。
- 🥢 素手で触らない
- ❄️ 十分に冷ましてから詰める
- 💧 水分の少ないおかずを選ぶ
「忙しい朝に、そんなにできない…」
そう思ってしまいますよね。
でも、
✔ トングや箸を使う
✔ 前日に下準備しておく
それだけでも、
菌が入り込むチャンスはぐっと減らせます。
🌱 子ども弁当こそ意識して
量が少ない=温度変化が早い。
大人より慎重がちょうどいいです。
🧼 冬こそ必要な“基本の衛生習慣”
特別なことは、必要ありません。
でも、
「当たり前」を冬仕様に戻すことが、とても大切です。
- 👐 手洗いは石けん+20秒
- 🧽 布巾・スポンジは毎日交換 or 除菌
- 🪟 換気でキッチンの湿気をリセット
冬はどうしても、
「寒いから」「忙しいから」と省略しがち。
でも、食中毒は“ほんの一瞬の省略”を狙ってきます。
だから私は、
完璧を目指さず、戻る習慣を大切にしています。
🌸 覚えておいてほしい言葉
予防は、
「頑張ること」ではなく
思い出すことです。
❓ よくある質問(FAQ)
冷蔵保存した場合でも、目安は2日以内です。
とくに鍋のまま保存したカレーは、見た目に変化がなくても菌が増えていることがあります。
安全に食べるためには、
・小分けして保存する
・食べる前に全体をしっかり再加熱する
ことを意識しましょう。
残念ながら、保温弁当箱=絶対に安全ではありません。
中身が30〜50℃の「ぬるい温度帯」に長くとどまると、
かえって菌が増えやすくなることがあります。
保温弁当箱を使う場合は、
・熱々の状態で詰める
・長時間持ち歩かない
ことが大切です。
冬でも注意したいのは、水分が多い・加熱が不十分になりやすいおかずです。
- 煮物・和え物
- 半熟卵
- 前日の作り置きおかず
お弁当には、水分が少なく、しっかり火を通したおかずがおすすめです。
季節に関係なく大切なのは、次の3つです。
- 清潔:手洗い・調理器具の衛生
- 温度:冷やす・温めるを中途半端にしない
- 時間:常温に置く時間をできるだけ短く
冬は油断しやすい季節だからこそ、
「基本に戻る」ことが、いちばんの予防になります。
🌱 まとめ
冬の食中毒は、
特別な失敗や不衛生な暮らしが原因で起きるわけではありません。
一晩寝かせたカレー。
朝、急いで作ったお弁当。
保温弁当箱に詰めた、温かいごはん。
どれも、家族を思う気持ちから生まれた、
ごく普通の、やさしい日常です。
それでも冬は、
「寒い=菌が増えない」という思い込みが、
知らないうちに油断を生んでしまいます。
この記事でお伝えしてきたのは、
「怖がるための知識」ではありません。
✔ 冬でも菌は増えること
✔ カレーやお弁当には、特有のリスクがあること
✔ ほんの少しの工夫で、防げること
それを知っているかどうか、ただそれだけの違いです。
🌸 覚えておいてほしいこと
予防は、完璧じゃなくていい。
「あ、そうだった」と思い出せることが、いちばんの対策です。
今日からすべてを変えなくても大丈夫。
・カレーは小分けにしようかな
・お弁当、少し冷ましてから詰めようかな
そのひとつの選択が、
あなたと、あなたの大切な人の未来を守ります。
この冬の食卓が、
安心とあたたかさに包まれた時間でありますように。
📚 参考・監修情報
食中毒関連感染症の基礎知識・発生動向
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha.html
食品の安全・家庭での食品管理に関する注意喚起
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/
⚠️ 注意書き
本記事は、一般的な健康・予防情報を目的としており、
特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。
症状が強い場合や、
腹痛・下痢・嘔吐・発熱などが続く場合は、
自己判断せず医療機関へご相談ください。
※ 情報は執筆時点の公的機関資料を参考にしています。


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